公益財団法人日本美術院が日本画家で元理事の梅原幸雄氏に科した1年間の出品停止処分について、東京高等裁判所は2025年12月10日、この処分を「違法かつ無効」と判断し、日本美術院に対し220万円の損害賠償支払いを命じた一審判決を維持しました。日本美術院と梅原氏双方が控訴していましたが、控訴審でも結論は変わりませんでした。

問題となったのは、日本美術院が2023年4月27日に行った処分です。日本美術院は、梅原氏の日本画作品が、同人作家・國司華子氏の約20年前の院展出品作と類似しているとする指摘を受け、理事解任の上程と1年間の出品停止を決定し、その内容を約3年間ホームページ上で公表していました。梅原氏はこれを「盗作作家」との烙印を押す不法行為だとして提訴し、一審で勝訴していました。

梅原氏は判決後の司法記者クラブでの会見で、作品制作は國司氏の作品と無関係であり、当該作品を記憶すらしていなかったと改めて主張しました。また、日本美術院側が、依拠性(他人の作品を土台にした創作)がなくても「結果として類似していれば責任を負う」としていた点について、「普遍的なモチーフを描く際に過去作との類似を逐一確認するのは現実的でなく、創作の自由を著しく制限する」と批判しました。

梅原氏は、倫理委員会の審理過程で、処分内容が理事から事前に事実上予告され、制作過程の説明や追加証拠の提出機会も十分に与えられなかったと訴えています。今回の高裁判決は、こうした内部手続きの公正さや、処分公表が作家生命に与える影響にも一石を投じた形です。今後、日本美術院側が上告するかどうか、また、美術団体全体で懲戒手続きや表現の自由に関するルール見直しが進むかが注目されます。

source: PR TIMES

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